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執筆者の写真水口 貴成

ケアスマイル通信 №12「鍼灸治療で膝の痛みを緩和する方法」

皆さんこんにちは!


西宮市甲子園口北町、鍼灸マッサージ院(はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル)の水口です。


今回のテーマは「膝の痛みと鍼灸治療」です。


膝の痛みは、長時間の立位や歩行ができなくなったり、正座ができなくなったりなど、日常生活に影響を及ぼします。また、膝の痛みがあるために脚をかばって歩くことも多く、膝の痛みから姿勢不良や腰痛などにもつながることがあります。


鍼灸治療は、疾患や症状に適したツボに細い針を入れたり、もぐさを置いて燃焼させたりなど、生体に刺激を加えることで、人が本来持っている痛みに対する抵抗性を高めたり、自己治癒力を高めたりする効果があります。


鍼灸治療はそういった鎮痛メカニズムを利用しているため、膝の痛みに対しても効果的なアプローチとなります。


ここでは、鍼灸治療で膝の痛みを緩和させる方法やそのメカニズムについて解説します。


1.膝の痛みの原因 膝の痛みの原因は関節炎、軟骨の損傷、靭帯の緊張などがあります。


さらに膝の痛みが生じている部位を確認することで、どこの組織に負荷が生じているのかを判断することが出来ます。


大きく分けて膝の痛みは、内側、外側、前面と分けることができ、痛みが起きている部位ごとに原因が異なります。


①膝の内側の痛み

 膝の痛みを抱える方で最も多い症状です。


X脚で膝の内側に痛みが起きている場合は、内側側副靭帯・鵞足部という部位が常に伸ばされている状態となります。



膝前面の図


その状態が持続した結果、炎症が生じて膝の内側に痛みを起こしている可能性があります。


O脚で膝の内側に痛みが起きている場合は、半月板という膝関節のクッションが持続的に圧迫されています。


その結果、半月板に微細なダメージが加わることにより痛みが生じている可能性があります。

半月板の図

②膝の外側の痛み

 ランニングなどのスポーツを行っている方に見られやすい症状です。


膝の外側に存在している組織の柔軟性が低下している時、つま先が外側を向いている状態(下腿外旋位)になりやすいです。


その状態で運動をすることで、膝の外側にある大腿二頭筋腱に摩擦ストレスが生じて痛みを起こすことがあります。



大腿二頭筋の図


またO脚で、膝の外側に痛みが起きている場合は、外側側副靭帯が常に伸ばされている状態となります。


その状態が持続した結果、何らかの原因による組織の損傷で炎症が生じることがあります。


その他、運動時に膝の外側にある腸脛靭帯が大腿骨の外側にあるでっぱり(外側上顆)に擦れることで、摩擦ストレスが生じ、腸脛靭帯炎を引き起こすことがあります。


腸脛靭帯炎は別名ランナー膝とも言い、ランニング選手に多く見られます。



腸脛靭帯、外側側副靭帯の図


③膝の前面の痛み

 スクワットやしゃがむ時、膝の前面にある膝蓋靭帯は伸ばされます。膝を曲げるときに重心が後ろに傾きすぎると、膝蓋靭帯への負荷が高まるとされています。この負荷が過剰になると膝蓋靭帯炎を引き起こすことになります。


膝蓋靭帯炎は別名ジャンパー膝とも言い、ジャンプを多用するアスリートに多くみられます。


その他、階段の下り動作やしゃがみ込み動作の時、膝の前面に痛みが起こっている場合は、膝蓋大腿関節という膝のお皿(膝蓋骨)の裏にある関節の問題が考えられます。


これは、膝を曲げた状態の時、膝蓋骨が大腿骨に押し付ける力が働きます。この時に重心が後ろに傾きすぎると、結果的に膝蓋骨を押し付ける力が増すことになります。この負荷によって膝蓋骨の裏に圧迫が生じて痛みを引き起こすとされています。



膝蓋靭帯の図

以上のことから、膝の痛みが生じている部位を確認し、O脚・X脚などの状態を合わせてみることで、どの部位にどのような負荷が生じやすいのかを知ることができ、鍼灸治療で刺激する部位が決まります。


これが判断できないと、ただやみくもに鍼灸をすることになり、満足のいく治療効果を上げることができません。


2.鍼灸による膝の痛みへのアプローチ方法


膝の痛みに対する鍼灸治療の目的は、痛みの軽減や関節の可動性の向上、炎症の抑制などがあげられます。


主なアプローチとしては、原因となっている部位にあるツボを刺激したり、周辺の筋肉の緊張を和らげたり、血行を促進させたりすることで、膝の痛みの緩和させ、関節を動かしやすくします。


共通して刺激する部位は大腿四頭筋の外側(外側広筋)と内側(内側広筋)です。

この筋肉は、膝関節の安定性に関与している筋肉です。大腿四頭筋が筋力低下、筋緊張などで正常に作用しない場合、膝の安定性が低下するため、まずはこの筋肉を正常化させるように鍼灸刺激を行います。



大腿四頭筋の図


この筋肉を共通刺激部位として、あとは、膝の痛みが起きている部位ごとに刺激していきます。

以下、その一例となります。


①膝の内側の痛み

 膝の内側に痛みが起きている場合、炎症が起きているのは半月板、内側側副靭帯、鵞足の可能性が高いです。次に示す部位に鍼やお灸をすることがあります。


内側の半月板は膝関節を曲げた時にみられるへこんでいる部位にあります。ツボでいうと内膝眼という部位になります。




膝への鍼灸治療

内側側副靭帯は先ほど半月板のところで説明した膝関節を曲げた時にみられるへこみの少し内側にあります。


鵞足部は脛の内側を下からたどったときに、骨に当たって指が止まるところから1横指上の部位にあります。圧痛があればそこが鵞足部です。


膝の内側が痛い場合はこれらの組織を刺激していきます。


②膝の外側の痛み

 膝の外側に痛みが起きている場合、炎症が起きているのは外側側副靭帯、大腿二頭筋腱、腸脛靭帯の可能性が高いです。次に示す部位に鍼やお灸をすることがあります。


外側側副靭帯は膝関節を曲げた時にみられる外側のへこみの少し外側にあります。


大腿二頭筋は、太ももの後外側に付着している筋肉なので、鍼やお灸で刺激する場合はうつ伏せもしくは横向きでこの筋肉を狙っていきます。


腸脛靭帯は太ももの外側に走行している靱帯であり、ピンと張っている靭帯なので比較的触りやすいです。


この靭帯に鍼やお灸をしたり、この靭帯の緊張を調節している筋肉(大腿筋膜張筋、大殿筋)に刺激することもあります。


③膝の前面の痛み

 膝の前面の痛みの場合、炎症が起きているのは膝蓋靭帯や膝蓋大腿関節の可能性があります。


膝蓋靭帯は膝蓋骨のすぐ下にある大腿四頭筋の腱です。なので、鍼やお灸で刺激する場合は、大腿四頭筋を中心に施術していきます。共通部位である外側広筋、内側広筋だけでなく、大腿直筋や膝蓋靭帯部を刺激するケースもあります。


膝蓋大腿関節は膝蓋骨の裏にある関節であるため、膝蓋骨周囲を囲むように刺激していきます。


膝への鍼灸治療

以上のような部位を刺激して膝の痛みを緩和させていきます。


また、鍼灸治療だけでなくマッサージ、関節モビリゼーションなどを組み合わせた施術を行うことで、さらに治療効果を高めることも可能です。特に膝の関節モビリゼーションは即効性のある治療法なので、鍼灸と合わせて取り入れるとよいです。


膝への関節モビリゼーション

3.自宅でのケアと予防: 鍼灸院での施術だけでなく、日常生活でのケアも重要です。

この内容については、前回のブログでも紹介させていただきましたので、そちらを参照してください。




4.まとめ 膝の痛みにはさまざまな原因があり、適切な診察と治療が必要です。

鍼灸療法を受ける際は、痛みの部位を特定するためにしっかりとした検査や動きを確認してもらえる鍼灸師に診てもらうことが大切です。


鍼灸治療は膝の痛みに対して有効なアプローチ方法です。

適切な施術と日常生活でのケアの組み合わせにより、膝の痛みを軽減し、生活の質を向上させることができます。


しかし、重症度が高い場合や原因によっては効果があまり期待できない場合があります。


重症度が高いと判断した場合は、整形外科への受診を勧める場合があります。


鍼灸治療の恩恵を受けながら、健康な膝で快適な生活を送りましょう。


ブログを最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事を書いている人

水口貴成

はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル院長(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう師)

施術スタイル:現代鍼灸

ケアスマイルスタッフ紹介

~経歴~

平成24年 神戸市立盲学校 卒業 

あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国家資格を取得

平成27年 筑波大学理療科教員養成施設 卒業 教員免許状取得

平成28年 医科大学東洋医学科 研修生 修了

平成29年~令和4年 特別支援学校(盲学校) 理療科教諭 勤務 

令和5年はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル 開業


 急性・慢性的な痛みに悩む患者さんへ、鍼灸マッサージ師として、できることを日々全力で取り組んでいきます。地域の方の健康の維持・向上に努めながら、皆様の抱える辛い痛みを鍼灸マッサージで少しでも和らげて、笑顔あふれる日常を過ごしていただく、そんな治療院を目指しています。













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