皆さんこんにちは!
西宮市甲子園口北町 鍼灸マッサージ院(はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル)の水口です。
今回のテーマは「顔面神経麻痺と鍼治療」です。
顔面神経麻痺は、顔面の筋肉(表情筋)を支配する顔面神経に損傷が起こることで引き起こされます。この症状は、主に顔面の片側に多く、顔の表情の変化や口の開閉、涙や唾液の分泌、味覚や聴覚などにも影響を与えます。
また、重症度が高いと後遺症を残すことも少なくありません。主な後遺症として、顔面のけいれん、顔面部のこわばり、口を動かすと瞼が勝手に動く、食事の時に涙が出るなどがあげられます。
この後遺症は患者にとっては非常に不快であり、QOL(生活の質)を下げることにもつながります。
顔面神経麻痺の重症度の判断について、日本では「柳原法(40点法)」を用います。
詳細は省きますが、点数が0点に近いほど重症度が高く、38点で治癒という扱いとなっています。
およそ発症してから3週間から4週間の段階でおよそ10点未満なら重症であり、後遺症を残すことがあるといえます。
それ以上の点数なら治癒が見込めます。
お医者さんも柳原法を活用するのですがENoGという神経に電気を流して、反応を確認する検査をして、簡単な重症度や後遺症が残るかどうかを確認することができます。
鍼治療は、伝統的な中国医学の一部であり、急性期の顔面神経麻痺なら回復の促進、慢性期の顔面神経麻痺なら後遺症の軽減に効果があるとして、「顔面神経麻痺の診療ガイドライン2023」にも記載されています。
実際に鍼治療を行う部位について、「顔面神経麻痺に対する鍼治療・セルフケアについて」という動画をYouTubeにアップしましたので、こちらも合わせてご覧ください。
1.顔面神経麻痺の原因と症状の概要
原因と症状については、前回のブログにも書いています。こちらもご参照ください。
顔面神経麻痺は、顔面神経の損傷や圧迫によって引き起こされることがあります。主にウイルス感染(ヘルペスウイルス)が原因の約7~8割を占めており、その他の原因として、外傷、腫瘍などがあげられます。
顔面神経麻痺の主な症状には、顔面部片側の筋肉の麻痺、眼の開閉困難、唇の引っ張りや口の歪みなどがあります。その他、味覚が感じにくくなったり、音が過敏に聞こえる場合もあります。
2.鍼治療
鍼治療は、細い鍼を特定の経絡やツボに刺激することで、体のエネルギーバランスを調整し、自然な回復を促す治療法です。
顔面神経麻痺において、鍼は顔面神経の機能を改善し、筋肉の制御を回復させる効果が期待されます。
①鍼治療の部位
表情筋と言っても様々な種類があります。鍼治療の利点として個々の筋肉に対して刺激を与えることができます。主に以下の筋肉に鍼を入れていくケースが多いです。
・前頭筋
・眼輪筋
・大・小頬骨筋
・口輪筋
・口角下制筋
・広頚筋など

その他、上唇挙筋、側頭筋などの筋肉、顔面神経が走行している部位などを刺激します。
また、東洋医学的なとらえ方で、手足の末端に鍼を入れるケースもあります。
例えば、合谷という部位は、東洋医学的に言えば顔面部の症状に対して用いられ、実際に研究の結果、顔面部の皮膚血流を上げるという効果もあるそうです。
②鍼治療の効果
鍼治療は、症状の改善に向けた総合的なアプローチとして利用されます。経絡やツボへの鍼刺激により、血流が促進され、神経の再生や筋肉の緊張を緩和させることが期待できます。

また、顔面神経麻痺に伴って生じてくる肩こり、頭痛、顔面痛、精神的な抑うつ症状など、顔面神経麻痺のみの治療ではなく、全人的に患者様の症状を緩和させることも期待できます。
鍼治療は個々の症例だけでなく施術者によっても治療部位が異なり、治療の頻度や期間は患者の状態に合わせて調整されます。
4.セルフケアについて 顔面神経麻痺において最も大事とされているのがセルフケアとなります。具体的な内容は顔面部のマッサージやストレッチです。
ただしマッサージやストレッチを行うタイミングは、顔面神経麻痺が発症してから10~14日後にしてください。この期間はまだ炎症が終わり切っていないため、症状を悪化させる可能性があります。
また、絶対にやってはいけないことがあります。
麻痺を早く治したいあまり、強くマッサージをしたり、皮膚を広範囲で引き延ばすようなストレッチをしたり、百面相のように顔面をしっかり動かしたりすることは、絶対にやってはいけません。
これらは、後遺症を助長する恐れがあるからです。
顔面神経麻痺になると、早く治したい気持ちが強くなったり、抑うつ状態となってしまい、一生懸命頑張って治そうとしてしまいます。
一生懸命治そうとするのは悪いことではありませんが、後遺症が出てしまっては今後の生活の質に影響が及びます。
なので、あせらず慎重にセルフケアは継続して行うことが、麻痺の回復を早め、後遺症の予防につながります。
ここはしっかりと理解しておく必要があります。
では具体的にどのようなマッサージやストレッチを行うのか、その一部を紹介させていただきます。
基本的にマッサージする部位は前頭筋、眼輪筋、頬筋、口輪筋、広頚筋などになります。
ゆっくり優しく四指でまわすようにしてマッサージを行います。

ストレッチをする筋肉もマッサージをする部位と同様です。
ただし、広範囲でストレッチをするのではなく、しっかり筋肉の走行に沿ってストレッチをしてください。


皮膚を引っ張ってまとめて筋肉をストレッチしてしまうと病的共同運動を起こす恐れがあります。絶対にやめてください。
これらのマッサージやストレッチ法は指導されると思いますが、もし鍼治療を取り入れるのであれば、これらの指導法を知っている、説明できる鍼灸師がおすすめです。
5.注意事項 鍼治療は一般的に安全な治療法ですが、適切な知識をもった鍼灸師による施術が重要です。
正直どの鍼灸師でも対応できるわけではありません。
顔面神経麻痺に対して鍼治療を受けたい方は、鍼灸院を選ぶ際に以下のポイントを重視するとよいと思います。
①顔面神経麻痺に対する知識がある
②顔面神経麻痺に対しての鍼治療の目的や治療部位をしっかり説明できる。
③セルフケアがしっかり指導できる
顔面神経麻痺は、生活の質に大きな影響を与える病気です。
鍼治療は、顔面神経麻痺の早期回復や後遺症の予防・軽減に対して期待できる治療法の一つです。
専門的な知識を持った鍼灸師の指導のもと、早期に鍼治療を実施し、総合的なアプローチを行い、患者様が抱える不安など心身ともにサポートすることが重要となります。
このようなブログ記事をとおして、顔面神経麻痺と鍼治療に少しでも興味を持ってもらえれば幸いです。
ただし、顔面神経麻痺について、ベル麻痺かラムゼイハント症候群など明確に区別して説明したわけではありませんので、ご自身の顔面神経麻痺が鍼治療の適応かどうか、さらに詳細な情報が知りたい方は、担当するお医者さん、もしくは治療家に相談することをお勧めします。
以上が、顔面神経麻痺と鍼治療・セルフケア でした。参考になれば幸いです。
ブログを最後まで見ていただきありがとうございました。
この記事を書いている人
水口貴成
はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル院長(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう師)
施術スタイル:現代鍼灸

~経歴~
平成24年 神戸市立盲学校 卒業
あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国家資格を取得
平成27年 筑波大学理療科教員養成施設 卒業 教員免許状取得
平成28年 医科大学東洋医学科 研修生 修了
平成29年~令和4年 特別支援学校(盲学校) 理療科教諭 勤務
令和5年 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル 開業
急性・慢性的な痛みに悩む患者さんへ、鍼灸マッサージ師として、できることを日々全力で取り組んでいきます。地域の方の健康の維持・向上に努めながら、皆様の抱える辛い痛みを鍼灸マッサージで少しでも和らげて、笑顔あふれる日常を過ごしていただく、そんな治療院を目指しています。
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