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  • 執筆者の写真水口 貴成

ケアスマイル通信 №27 顔面神経麻痺の後遺症に対する症例のご紹介

皆さんこんにちは!


西宮市甲子園口 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイルの水口です。


ケアスマイルは、痛み・しびれ・麻痺でお悩みの方に向けた痛み専門の鍼灸マッサージ院です。


軽い肩こりから、顔面神経麻痺、頭痛、うつ病、慢性疲労、スポーツによるテニス肘、ゴルフ肘、ランナー膝など幅広い症状に対してアプローチしています。


開院して1年がたち、おかげさまで多くの症例に関わることができました。


その中で、今回は実際に当院に来院された


「顔面神経麻痺の後遺症に対する鍼治療の症例」をご紹介します。


顔面神経麻痺とは、顔の筋肉を支配する顔面神経に何らかの障害が生じることで引き起こされます。


誰でも発症する可能性があり、特に予兆もなく朝起きたら突然発症した・・・・


というケースも少なくありません。


女性が顔面神経麻痺となってしまうと、外出できなくなったり、「うつ症状」を引き起こすこともあります。


発症すると日常生活に大きな影響を及ぼします。


例えば、飲み物を飲むときにこぼれる、笑顔がゆがむ、笑顔ができないから人前で話せなくなる、後遺症で顔がぴくぴく動いて不快、食事の時に勝手に顔が動くなど、非常に不快な症状が出てきます。


特に重症例の場合、後遺症として顔面部の痙攣、食事の時に涙が出る、口を動かしているのにまぶたが動く、などの症状が発症して3ヶ月から6ヶ月目にみられる場合があります。


顔面神経麻痺の後遺症はいったん発症すると自然回復は見込めず、患者は長期間にわたって不快な症状に苦しむことになります。


顔面神経麻痺の後遺症に関する治療法には、理学療法、バイオフィードバック療法、ボトックス注射、筋肉の切除術・挙上術といった形成外科手術が代表的であるが、その他の明確な治療法というのが確立されておらず、治療効果についても必ずしも満足のいくものは得られていないのが現状とされています。


今回は、そんな顔面神経麻痺の後遺症に対して、鍼治療を行った結果、後遺症の軽減、QOL(生活の質)の向上につながったため、患者様ご本人の承諾を得られましたので、ご紹介させていただきます。


 
患者Aさんについて

年齢は50代の男性。


当院に来院する日から一昨年の11月頃、顔面神経麻痺の診断を受けた。


発症当時、耳鳴り・難聴・めまい・水疱の形成等は確認されなかったとのことだったので、おそらくベル麻痺だと思われます。


これは「顔面神経麻痺である」としか診断されていなかったとのことでした・・・


その後、医療機関にて薬物療法による標準治療をうけ、顔は動くようになってきたが次第に顔面部の痙攣が生じるようになったとのことです。


当院に来院した年の3月、後遺症の治療のためにボトックス注射を受けて、数週間様子をみて、眼の周りの痙攣は落ち着いたが、口周りの痙攣が緩解せず、期待する効果を実感できなかったため、当院で鍼治療を受けることになりました。


患者Aの主訴は、顔面神経麻痺の後遺症の特徴である、顔面部の痙攣、顔面部のこわばり感、顔面部の疲れやすさを訴えました。


また、食事中の涙(ワニの涙)、眼と口が一緒に動く(病的共同運動)は認められませんでした。


とくに「口周りが常にピクピク動くので、非常に不快だ」、と日常生活上でもかなり困っている様子でした。


当院では顔面神経麻痺の治療効果やQOL(生活の質)を正しく評価するために、医療機関でメジャーに活用されている、「柳原法(40点法)」と「FaCE Scale」を用いて評価しました。


「柳原法」は、40点満点で38点で病的共同運動のないものを治癒とする評価方法。


「FaCE Scale」は、75点満点で生活の質がどれほど障害されているのかを点数化する評価方法であり、どちらも点数が高くなるほど良い結果、患者満足度も高いと言えます。


初診時

「柳原法」は30点

「FaCE Scale」は47点


顔面神経麻痺が発症してから1年以上経過していることを考えると、あまり良い点数とは言えませんでした。


当院で受けた鍼灸治療の効果は・・・・

現在も施術は継続していますが、これまでの経過をご紹介します。


施術頻度は2週間に1回、合計5回、およそ2か月間、鍼治療を実施しました。


基本的な施術計画として、顔面の表情筋に施術しました。

写真の許可は得られていないため、イメージの写真を貼りました。参考にしてください。




口周りの痙攣は1分毎おきに生じており、鍼の刺激中も常に動いているような感じでした。


初回から3回目にかけて、口周りの痙攣はかわらず、ほとんど変化はありませんでした。


特に3回目に来られた際には、口周りの痙攣が大きくなり、顔面部のこわばり感も出現していました。


4回目の施術では、「鍼の刺激中にピクピク動く感じがあるが、少し痙攣する回数が減っている?ような感じがする、気のせいかもしれないが・・・」とのコメントを頂けました。


この時の口周りの痙攣は4分毎に起きており、初回と比べて頻度が落ち着いてきていました。


さらに、柳原法の点数は36点となり、眼の周りの動きが良くなっている感じが認められました。


5回目の施術では、


「以前よりは痙攣の回数が減っている」


「最近になって少しずつ効果を実感してきた」


とのコメントがあり、施術中の痙攣の回数も顕著に減っているのが確認できました。


この時、柳原法の点数は36点、残っている口周りの動きが少し出てきたがまだ点数には至っていないような感じでした・・・


「FaCE Scale」は62点となり、その他の日常生活で生じている不快感も減っているようでした。






現在も経過観察中であり、今後2回目のボトックス注射を受ける予定であるため、さらなる相乗効果も期待できると言えます。




なぜ鍼治療が顔面神経麻痺の後遺症に効果があるのか・・・・

今回の症例では、ボトックス注射をうけてから数週間後に当院に来院されました。


ボトックス注射は個人差はあるが、注射をしてから2~5日で効果がみられ、2~4週間ほどで効果が最大となり、数か月持続するとされています。


今回の経過では、数週間経っても期待する効果が実感できず、初回から約1ヶ月(3回目の施術)経過しても著名な効果が出なかったことを考えると、継続的な鍼治療が後遺症の緩解に寄与したことが考えれらます。


患者Aが効果を実感しはじめたのが4回目、初回から1ヶ月を過ぎた頃です。


このことから、顔面神経麻痺の後遺症に対する鍼治療ではある程度の治療期間と回数が必要であることが言えます。


では、なぜ鍼治療が顔面神経麻痺の後遺症に対して効果を発揮できたのか・・・


まずそもそもなぜ顔面神経麻痺の後遺症で痙攣が発生するのか・・・・


後遺症の発症メカニズムには、神経過誤支配説、核過剰興奮説、接触伝導節があります。


この中で、痙攣に関わる内容は、顔面神経麻痺の場合、顔面神経が損傷を受けているため、脳にある神経の核となる部分に過剰な興奮が生じることがあります。


もっと簡単に言うと、切れかけの電線だと、バチッ!!とショートを起こします。


このときその場所で大量の電気が通ることで、火花を散らします。


損傷を受けた顔面神経も同様で、損傷部位でショートのようなことが起こり、神経に過剰興奮が生じて、痙攣が生じるとされます。


鍼治療には過剰な神経の活動を抑制する働きがあるとされます。


今回の症例の場合、顔面部の表情筋への刺激、顔面神経走行部への刺激が神経と筋肉の接合部における、過剰な興奮を抑制したのではないかと考えられます。


つまり、神経の働きが正常化されれば、痙攣の発作を抑制することが期待できるということです。



これが、FaCE Scale47点→62点にも表れていると思われます。


ちなみに、ボトックス注射も同様のメカニズムにより症状を緩和させます。


なので、鍼治療でもボトックス注射と同様の効果が発現したことが伺えます。


ただし、本症例ではボトックス注射で期待する効果が得られていなかった症例であるため、今回の鍼治療では、異なるメカニズムが働いた可能性があることは否定できません。


今後、症例数を増やしながら検証していく必要があります。


ちなみに、顔面神経麻痺や外傷以外でみられる顔面部の痙攣には、脳の血管が顔面神経を圧迫することで、動脈の拍動により神経が刺激されて顔面の筋肉がかってに収縮して顔面けいれんを引き起こすことがあります。


顔面神経麻痺以外の顔面けいれんの場合は異なる病態である可能性があります。


最後に・・・

顔面神経麻痺による神経損傷が回復する時間は、1日1㎜のスピードで神経線維が伸びて再生するとされます。


一昔前までこの再生を速めればよい、という発想でしたが、現在はよりじっくりゆっくり回復した方が神経の誤った再生を防ぐことができるとされます。


昔は当たり前だったことが、今では全く違う考え方になっているというのは医療の世界ではよくあることです。


昔の鍼治療も回復を早めることが重視されていました。現在は、後遺症の発生を予防することが第一とされています。


今回の症例のように後遺症が出現してもある程度の効果は期待できますが、可能な限り早期から治療を開始することで後遺症を予防することができます。


ちなみに、顔面神経麻痺は1回の鍼治療で治るものではありません。


逆にそのような症例があるのであれば、顔面神経学会にでも報告するとこれまでの治療法がひっくり返りかねません!

おそらくニュースでも取り上げられることでしょう・・


逆に言えばそれぐらいすごいことなのですが、そんな都合の良い話はありません。

過大な広告には十分注意してください!!


顔面神経麻痺の鍼治療の場合は、1回で良くなることはなく、ある程度の継続した治療頻度が必要となります。


通常の治療でも数か月はかかるものです!


このことについて、鍼治療を受ける前にしっかりと理解しておいてください!


この話を聞いて、鍼灸治療に魅力を少しでも感じてもらえたら幸いです!


鍼灸治療は不思議な治療法ではなく、れっきとした理論の元、行われており、顔面神経麻痺の診療ガイドラインにも記載されているエビデンスがある治療法です。



顔面神経麻痺でお悩みの方は鍼治療も一つの選択肢としてみてはいかがでしょうか。


顔面神経麻痺で鍼治療を受ける場合は、鍼灸師ならだれでもよいか、というわけではなく、以下のポイントがわかってる鍼灸師が望ましいです。


 ・日常生活委の指導や顔面部のセルフケアの指導ができる

 ・顔面神経麻痺に対する知識がある

 ・鍼治療の目的や内容をしっかり患者様に説明できる


鍼治療を受ける頻度としては重症度で異なりますが、1~2週間に1回、まずは約2~3か月ほど受けてみるとよいと思います。



 

この記事を書いている人

水口貴成

はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル院長(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう師)

施術スタイル:現代鍼灸

~経歴~


平成24年 神戸市立盲学校 卒業 

あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国家資格を取得

平成27年 筑波大学理療科教員養成施設 卒業 教員免許状取得

平成28年 医科大学東洋医学科 研修生 修了

平成29年~令和4年 特別支援学校(盲学校) 理療科教諭 勤務 

令和5年 西宮市甲子園口 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル 開業


 急性・慢性的な痛みに悩む患者さんへ、鍼灸マッサージ師として、できることを日々全力で取り組んでいきます。地域の方の健康の維持・向上に努めながら、皆様の抱える辛い痛みを鍼灸マッサージで少しでも和らげて、笑顔あふれる日常を過ごしていただく、そんな治療院を目指しています。


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