top of page
  • 執筆者の写真水口 貴成

ケアスマイル通信 №22 「最近、肩を動かすと痛いな・・・これって五十肩?」~五十肩の特徴と治療・セルフケア~

皆さんこんにちは!


西宮市甲子園口 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイルの水口です。


ケアスマイルでは、痛み・しびれ・麻痺でお悩みの方に向けた痛み専門の鍼灸マッサージ院です。


軽い肩こりから、肩の痛み、五十肩、腰痛だけでなく、顔面神経麻痺や頭痛、片麻痺といった神経内科的な症状に対して、鍼灸治療を中心に施術を行っています。



今回のテーマは「五十肩の特徴と治療法」についてです。


こんな症状に悩んでいませんか?


・年齢が40~60歳代、何もしていないのに最近になって肩が痛くなってきた!

・肩が痛くて眠れない!

・寝返りをするときに肩の痛みで目が覚める!

・肩をあげるときに痛みが起こる!

・肩が固まって動かしづらくなってきた



寒くなってきているせいか、肩の痛みを訴える方が当院でも増えてきています。


実際、一言で肩の痛みといっても様々な原因や病態があります。


また、ただの五十肩だから治療は不要・・・というのも昔の話です!


現代医学においては五十肩も放置しておくと肩の痛みが残ったり、動かしにくい状態となったりと、後遺症を残すケースも少なくありません。


そんな中で、肩の痛みを治してほしいと思い、整骨院、整体院、鍼灸院などの治療院を探される方もおられるでしょう!


なかには悪質な施術師も存在し、医学的な知識が乏しく、独自のとんでも理論で施術を行っている者もいます。


今回は五十肩の特徴と実際に行われている治療法について説明していきます。


以前にも似た記事を書きましたが、今回はさらにアップデートしていきます。


この記事を読んでいただき、五十肩に対する理解を深めていただき、治療院を選ぶ際の参考にしてください。


五十肩とは


痛みが生じている部位について

一言で五十肩といっても痛みが起きている部位は肩の上面、外側、前面と様々です。


実際は痛みが生じている部位によって、治療の目的や刺激する部位が異なりますので、まずは、自分の肩関節の痛みがどの部位で起こっているのかを確認しましょう。



専門用語でいうと次の部位が痛みを起こしていると考えられています。


1)腱板滑動機構(外側・上面の痛み)

この部位で痛みが起きているということは、腱板や肩峰下滑液包という部位の炎症が起きていると考えられます。

腱板とは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱のことを指します。


肩峰下滑液包とは、肩関節にある関節液が入った袋のことを指します。これが正常に機能することで、肩関節を動かす際に、骨同士がぶつからず円滑な運動を行うことができます。


腱板炎においては、主に棘上筋・棘下筋腱の炎症が痛みを引き起こしています。


棘上筋は血流が乏しく、損傷した際の修復する力が弱い危険な領域でもあります(これには諸説あり)。


また、近年では痛みを起こしているのは、実は棘下筋の可能性が高いのではということが示唆されています。


そして、この腱板での炎症は、肩峰下滑液包にも広がるため、癒着性滑液包炎に至ると関節拘縮、すなわち肩関節が固まって動かなくなってしまいます。


2)上腕二頭筋長頭腱滑動機構(前面の痛み)

この部位で痛みが起きているということは、上腕二頭筋長頭腱に炎症が起きていることが考えられます。


上腕二頭筋は肘を曲げる運動をする筋肉のことで、実はその腱は肩関節の上面を通って、上腕骨の前面にある結節間溝という溝を通過します。


特に「なんでやねん」のような突っ込みをする肩の運動をすると、結節間溝部のところで、上腕二頭筋長頭腱が擦れてさらに障害を受けやすくなります。



3)腱板疎部(前面の痛み)

この部位は、棘上筋腱と肩甲下筋腱の間にある膜様構造のことです。


この深層には関節包、表層には肩峰下滑液包があり、「なんでやん」の動作から急激に「お腹に手を当てる」動作をすることで損傷されやすいです。


この部位の炎症は、腱板炎や上腕二頭筋長頭腱炎からも広がり、最終的に癒着や瘢痕化すると肩が固まることになります。


4)肩が固まった状態

上記の1)~3)までの部分で炎症が起き、それが肩関節を包んでいる袋(関節包)にまで炎症が広がることで、癒着性関節包炎が引き起こされます。これは、肩関節の拘縮の原因となり、この状態になると肩をあげることが困難となります。


治療の目的としては、このような状態にならない、もしくは軽減させることを目的に原因となる部位に対してアプローチしていきます。


5)その他の影響(関節唇やQLSなど)

この辺の部位が原因で起こる痛みに関しては、治療をしている中でなかなか効果があげられないときなどに考えられる部位となります。


なので、初診の段階でこれらの部位に焦点を当てることは少なく、まずは1)~3)までのところを治療して、経過をみてから検査等で判断します。


五十肩の名称について

 肩関節の痛みを引き起こす疾患はたくさんあります。


腱板炎、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎、変形性腱板炎(外傷性・腱板不全断裂)、上腕二頭筋長頭腱炎、烏口突起炎、腱板疎部炎、不安定肩関節症など以外に多くの疾患があります。


これらの明らかな問題がなく、肩の痛みや可動域の制限が認められると「いわゆる五十肩」と診断されます。


しかし実際は、先ほど説明した腱板炎、上腕二頭筋長頭腱炎などの炎症が治癒せずに増悪すると癒着性の滑液包炎や関節包炎を引き起こし、肩関節が固まってしまいます。


「いわゆる五十肩」とはこのような状態のことを指しますので、背景には、腱板滑動機構・上腕二頭筋長頭腱滑動機構・腱板疎部の炎症が関与することになります。


ちなみに「五十肩」とは50代ごろに発症する肩の痛みと運動制限がある状態をさし、40代なら「四十肩」と言われています。


なので、正式な病名ではなく俗称です。


正式な病名は「凍結肩」と言われています。


五十肩の経過

別の記事にも書きましたが、いわゆる五十肩には3つの病期、急性期、慢性期、回復期といった症状の段階があります。


 ①急性期(疼痛期)

 痛みが最も強い時期を指します。症状が強い場合は動かさなくても痛みが起こり、夜間に痛みが起こるため、眠れない(入眠時障害)ということがあります。まだ、この時期では痛みがあるけど無理すれば肩を180度上げることができる人が多いです。


 ②慢性期(拘縮期)

 これは、痛みは少なくなるが関節が固まって動かしづらくなる時期を指します。この時期になると、どの方向に肩を上げても痛みで肩があがらなくなります。衣服の着脱が困難となり、夜間では痛みで目が覚める(途中覚醒)がみられることが多いです。


 ③回復期

 可動域が徐々に改善し、運動時の痛みもなくなる時期を指します。ここまでくれば、医療機関や治療院の受診をやめる人が多くなります。


 これらの経過を経て、約1~2年で自然軽快、いわゆる自然に症状がなくなっていきます。なので、昔はほっとけば治るとされていました。


 しかし、自然軽快した人、ほったらかした人では、約半数に痛みや可動域制限などの症状が残ってしまうということが明らかになりました。


なので、今では積極的な治療を行うことが重要となってきました。




ここからは治療編に入ります!


五十肩の治療・セルフケア


基本的に刺激する筋肉はどの治療法でも同様の筋肉を刺激します。


棘上筋、棘下筋、小円筋、三角筋は五十肩のどの病態でも刺激します。


これらの部位は肩関節を取り囲むように付着している筋肉であり、ここを刺激しない治療家はまずいないといえる部位となります。


なので、ここではそれ以外の刺激部位について説明します。


手技療法(あん摩・マッサージなど)

肩関節の動きを良くするために肩関節周囲の筋肉をほぐすのですが、五十肩で悩んでいる方の場合、肩甲骨の動きが悪いケース、上腕骨の前方変位(いわゆる巻き肩に近い姿勢)、肩関節後方の軟部組織の拘縮(棘下筋・小円筋などの短縮)などが考えられます。


なので、いわゆる肩甲骨リリース(肩甲骨はがし)で肩甲骨の動きを良くします。


特に肩関節を動かすときには、肩甲骨の動きや鎖骨の動きがないと肩を上げることはできないため、肩甲骨や鎖骨回りの筋肉もアプローチ対象となります。


上腕骨が前方に変位している場合は、腱板の機能を回復させるために筋肉の収縮を促すようにさせたり、大胸筋部への施術を行ったりします。

鍼灸治療

肩関節の前面の痛みがある場合、上腕骨の前面にある結節間溝部に刺激することがあります。


この部位には肩関節痛に関連する上腕二頭筋長頭腱が走行している部位でもあり、鍼刺激をすることで、痛みの感覚を軽減させることが出来ます!


また、基本的に刺激する筋肉に対して、低周波鍼通電を活用して筋肉を動かして筋肉をやわらげることで、肩関節を動かしやすくすることができます。


これだけでもかなりの可動域の改善が見込めます! !


その他、なかなか指では刺激できない奥深くにある筋肉を的確にとらえることが出来るのが鍼治療の魅力でもあります。


実際、腋窩神経という神経も鍼だと刺激することができます。


神経に対してアプローチすることで、さらなる痛みの軽減を図ることが期待できます!



セルフケア

五十肩の治療において、施術家頼みになるとなかなか治療効果を上げることが難しい場合があります。


当事者である患者も治療に対して積極的になることが治癒を早めることにもつながります。


ここでは、簡単なセルフケアをご紹介します!


1)アイロン体操(コッドマン体操)

五十肩の運動療法でこれを知らない治療家はまずいません。

逆にこれがわからない治療家は本当にやばいです(笑)


その名の通り、アイロンなどの重たいものを持って肩関節を振り子のように動かす運動のことを言います。


アイロンの重みと遠心力を利用して、肩関節の間に隙間をつくって動きをよくすることが出来ます。


このとき大きく動かす必要はなく、痛みのない範囲で動かすことが大切です!

2)肩甲骨周囲の筋肉群のトレーニング

いわゆる肩回しのことを指します。


ただし動かすときには肩関節ではなく、肩甲骨を意識して動かすことが重要となります。

先ほど説明しましたが、肩の運動には肩甲骨や鎖骨の運動が不可欠です。


痛みのない範囲で肩甲骨をぐるぐると回すことでさらなる可動域の確保を目指しましょう!

3)腱板の筋肉のトレーニング

腱板の筋力を鍛えることで、肩関節周囲の安定性を確保することができ、なおかつ肩関節の可動域の改善が見込めます!


具体的には、わきの下に小さいゴムボールを挟んで、ボールを5秒間押し付けるような内転運動を1日10回を3セット実施します。


肩の痛みが減ってきたのであれば、ボールをゴムチューブに変えて、外側や前方に挙上する運動を行い、筋力をつけていきましょう!
















個人的に一言

治療院で五十肩の治療を検討されている場合、まず五十肩の経過、痛みの発生部位に関する内容、治療の目的が説明できないところは、おすすめできません!


あなたの五十肩は、知り合いや友達が経験した五十肩とは、痛みの原因も状態も違うかもしれません。


「友達がこれをしたら良くなった」と言っても根本的な問題点が違えば、治療部位も経過も変わってきます。


また、動作確認や検査もせずに治療を進めるところは論外です!


治療の目的や理論、なぜその筋肉を刺激するのかなどを説明できないようだと、治療の意味もありません。


気になることは施術者にしっかり質問して、しっかり答えてくれるところを選ぶようにしましょう。



最後に・・・

最後に自分の持っている症状を治すためには、患者さん本人も治そうとする意欲と行動が必要になります。


これは医者の治療もそうですが、患者さんが施術家に任せきりで治療を受けても良くなりませんし、またすぐに元の症状に戻ります。


患者さんを良くしたい、一緒によくできるようにコミュニケーションをとりながら、よくなる方法を模索してくれる、そんな施術者を選ぶことが重要だと考えます。


そればっかりはホームページや口コミだけの内容では測れないところがあり、難しいところではありますが、少なくとも患者さんにも自分が行こうとしている治療院のことをしっかり調べて、納得した上で治療を受けて欲しいです。


最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。


この記事を書いている人

水口貴成

はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル院長(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう師)

施術スタイル:現代鍼灸

~経歴~


平成24年 神戸市立盲学校 卒業 

あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国家資格を取得

平成27年 筑波大学理療科教員養成施設 卒業 教員免許状取得

平成28年 医科大学東洋医学科 研修生 修了

平成29年~令和4年 特別支援学校(盲学校) 理療科教諭 勤務 

令和5年 西宮市甲子園口 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル 開業


 急性・慢性的な痛みに悩む患者さんへ、鍼灸マッサージ師として、できることを日々全力で取り組んでいきます。地域の方の健康の維持・向上に努めながら、皆様の抱える辛い痛みを鍼灸マッサージで少しでも和らげて、笑顔あふれる日常を過ごしていただく、そんな治療院を目指しています。


bottom of page