皆さんこんにちは!
西宮市甲子園口北町で鍼灸マッサージ院(はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル)をしている水口です。
今回のテーマは「鍼治療と五十肩」について、説明させていただきます。
はじめに 五十肩とは、初期症状に動作時での痛みや夜間痛、そこから徐々に肩の可動域が制限され、肩が挙げにくくなる状態を指します。その他、五十肩では肩こりも一緒に伴うケースも多いです。
鍼治療はそんな五十肩に対して、鎮痛や可動域の拡大といった効果が期待できます。
鍼治療は、伝統的な東洋医学に基づく治療法であり、痛みの緩和や機能回復に効果があるとされています。
このブログでは、五十肩の痛みを和らげたり、可動域を拡大させたりするための鍼治療についてご紹介します。
1.五十肩の痛みとは
五十肩は、詳細な原因は不明ですが、肩の関節周囲組織の炎症や変性が原因で起こるとされています。しばしば、肩の上げ下げや回旋運動が制限され、日常生活での動作が困難になります。
また、睡眠時に痛みで眠れなかったり、寝返りを打つときに目が覚めたりといった睡眠障害も引き起こすことがあります。
前回のブログやホームページの「お悩みの症状」でも紹介していますが、五十肩には3つの段階(病期)があり、急性期、慢性期、回復期それぞれに特徴的な所見や症状が現れます。
五十肩と診断された、あるいは疑われる方は今自分自身がどの段階に位置しているのかによっても、治療方針が異なってきます。
鍼治療の主な目的は、痛みの緩和、肩関節が固まる(拘縮)を予防・緩和させることにあります。以下の段階(病期)ごとに治療方針を決定していきます。
①急性期
主な治療目的は痛みの緩和です。しかし、痛みや熱感などの炎症症状が強い場合は、鍼刺激が痛みを増強させることがあります。なので、この段階では強い刺激は避けて、鍼の深度は浅く、弱い刺激で行うことが望ましいとされます。
炎症症状が落ち着けば、鍼通電療法を実施します。刺激部位は以下の3.治療部位で示す部位となっています。
②慢性期
主な目的は関節拘縮の予防・緩和です。この段階で鍼灸マッサージ院に来られる方も少なくありません。患者様の鍼刺激に対して大丈夫であれば、早期から鍼通電療法を実施します。痛みが緩和したら、その後は運動療法を実施します。当院では関節モビリゼーションを実施し、関節の可動範囲を広げていきます。
③回復期
主な目的と治療内容は慢性期と同様です。ここまでくれば、痛みも少なくなり、肩関節の可動範囲も広がっています。患者様の望んでいる治療後のゴールによっては、この段階に入ると通院を止めることもあります。
2.鍼治療のメカニズム
鍼治療は、東洋医学的・西洋医学的にも治療効果のメカニズムがあります。詳細は省きますが、東洋医学的に言えば、特定の経絡(気のエネルギーが流れる道)に鍼を刺激することで、気のバランスを整え、身体の自然な治癒力を促進すると考えられています。
西洋医学的に言えば、鍼は筋肉や神経にある痛みのセンサーなどを刺激し、血流を改善させることで炎症や筋肉の緊張を緩和し、痛みを軽減する効果があります。また、鍼に電気を流す鍼通電療法においては、筋肉の血流、神経血流のさらなる上昇が期待できます。さらに、鍼通電療法では電気刺激により中枢(脳や脊髄)を刺激し、下行性疼痛抑制系という人間が本来持っている鎮痛作用を賦活化させることができ、痛みを和らげたりします。
以上のことから五十肩に対する鍼治療の効果をまとめると以下の通りです。
①痛みの軽減
鍼は痛みのセンサーを刺激することで、痛みを感じにくくする効果があります。また、鍼により自然治癒力を高めて炎症を抑制し、痛みを軽減する効果が期待できます。
②血流の改善
鍼は局所的な反射を利用して血流を改善させる効果があります。血流が促進されることで、筋肉や関節組織に酸素や栄養が供給され、組織の修復や再生が進むことで痛みの緩和につなげていきます。
③筋肉の緊張緩和
鍼の刺激は筋肉内の血流を改善することで、筋肉の緊張を和らげる効果があります。五十肩においては、緊張した筋肉が痛みや可動域制限の原因となっていることがあります。鍼治療によって筋肉の緊張が緩和されると、痛みの改善や可動域の回復が期待できます。
さらに動かすときの痛みが緩和されることで、運動療法も行いやすくなります。
肩関節が固まってしまった場合(拘縮)、運動療法を行う必要がありますが、痛みが出てしまうと運動療法が行えない、もしくは効果が不十分となるケースがあります。鍼治療で痛みを和らげることで、積極的な運動療法につなげることができます。
3.鍼治療を行う部位
主に鍼治療の部位としてあげられるのが、肩関節の運動に関与する筋肉や肩関節の安定性に関与する筋肉を刺激していきます。
①三角筋
②棘上筋
③棘下筋
④小円筋
⑤肩甲上・下神経
YouTubeチャンネルでも紹介させていただいております。ご興味のある方はこちらもどうぞ。
特に棘上筋、棘下筋、小円筋、もう一つここにはあげていない肩甲下筋の4つをまとめて、回旋筋腱板とも言い、肩の運動時に上腕骨を肩甲骨に押し付ける働きがあります。この働きがうまく機能することで肩関節の安定性が保たれています。
しかし、この働きがうまく機能しないと、運動時に不安定になり、上腕骨と肩甲骨の一部が衝突して、炎症を引き起こすことがあります。その炎症を起こしている筋肉への血流改善、安定化させる働きを改善させることを目的に、鍼刺激を加えていきます。
ちなみに「肩甲下筋」については、肩甲骨の前に付着している筋肉であり、実際の臨床現場では難しかったりするケースもあります。実際にこの筋肉を狙って鍼刺激を行っている先生もいらっしゃいますが、腋窩から狙うため、技術的にも難しいです。
しかし、簡単な方法があります。肩甲下筋を支配している神経(肩甲下神経)に電気を流してアプローチすれば肩甲下筋を刺激することができます。こちらの難易度は実際に筋肉単独で狙うよりも簡単ですし、くすぐったいという心配もありません。
専門的な内容ですので詳細は省きますが、当院では、筋肉への鍼通電が不十分、痛みが強く出ている方にはこの肩甲上・下神経への鍼通電を行うことがあります。
4.鍼治療の注意点
鍼治療を受ける際には、以下の点に留意することが重要です。 ①専門性の高い治療家
五十肩に対する知識を十分に持った治療家に施術を受けるようにしましょう。治療の目的、なぜその部位に鍼やマッサージをするのか説明できる、五十肩の評価が行える治療家が望ましいです。そういった治療家は、患者様の質問に対しても真摯に答えてくれますし、しっかり今後の治療方針などを説明してくれます。
②個別の状態に合わせた治療
五十肩の症状は個人差があります。鍼通電療法を必ず行わないといけないわけではありません。患者様にとっては刺激量が多くなると症状の増悪にもつながります。治療経過をしっかりみながら、担当の治療家と相談して最適な治療計画を立てましょう。
③継続的な治療
鍼治療の効果を実感するためには、一度の治療ではなく、一定の期間をかけて継続的に受けることが必要です。特に五十肩は自然緩解や通常治療においても1年はかかります。直後に効果を実感しないこともあります。ただ、鍼治療を行うことで、これ以上の症状悪化を予防していることも考えられます。治療が長期間に及ぶケースも多いので、信頼できる治療家に施術を受けるようにしてください。
5.まとめ
五十肩の痛みを和らげる効果的な治療法の一つとして、鍼治療があります。鍼は痛みの軽減や血流の改善、筋肉の緊張緩和などの効果が期待できます。
しかし、鍼治療を受ける際には、五十肩に対する知識が十分ある治療家のもとで行うことや個別の状態に合わせた治療を行うことが重要です。五十肩に悩む方々が鍼治療を活用して痛みを軽減し、快適な日常生活につなげていきましょう。
以上、気になる肩の痛みがございましたら、ぜひ当院に相談してください。
ブログを最後まで見ていただきありがとうございました。
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この記事を書いている人
水口貴成
はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル院長(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう師)
施術スタイル:現代鍼灸
~経歴~
平成24年 神戸市立盲学校 卒業
あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師国家資格を取得
平成27年 筑波大学理療科教員養成施設 卒業 教員免許状取得
平成28年 医科大学東洋医学科 研修生 修了
平成29年~令和4年 特別支援学校(盲学校) 理療科教諭 勤務
令和5年 はり・きゅうマッサージ院 ケアスマイル 開業
急性・慢性的な痛みに悩む患者さんへ、鍼灸マッサージ師として、できることを日々全力で取り組んでいきます。地域の方の健康の維持・向上に努めながら、皆様の抱える辛い痛みを鍼灸マッサージで少しでも和らげて、笑顔あふれる日常を過ごしていただく、そんな治療院を目指しています。
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