顔面神経麻痺(ベル麻痺)
【患者】50代 女性
【主訴】
顔面筋の麻痺(柳原法18点→36点)
【不定愁訴】
首肩こり、顔面部の突っ張り感
【施術回数】 15回
【通院期間】 2か月半
【来院までの経過】
・1か月ほど前、朝起きて顔面部の違和感に気づいた。
・お茶を飲んだ時にこぼれたのをきっかけに近医の病院を受診した。
・顔面神経麻痺と診断され、初診から2週間後に実施した柳原法は10点であった。
・ステロイド治療を行ったのち経過観察
・発症から1か月経過したが、なかなか点数が上がらないため、鍼治療を検討した。
・当院初診時の柳原法の点数は18点であった。
【初診時の状態】
柳原法の内容
安静時非対称:4
額のしわ寄せ:2
軽い閉眼:2
強く閉眼:2
片目つぶり:2
鼻翼を動かす:2
イーと歯をみせる:2
口をへの字にする:0
頬を膨らます:2
口笛を吹く:0
【施術方針】
・発症から1か月ほど経過した段階で、柳原法で18点であり経過としては良好であることを伝え、麻痺の回復促進と後遺症の予防を目的に表情筋への鍼治療を実施した。
・病院でも指導されたリハビリやストレッチを再度確認し、継続して実施するように促した
【施術の経過】
≪1回目≫
検査のために顔面神経への通電を行い、表情筋の筋収縮が確認されたため、予後は良い可能性がるということを伝え、表情筋部への鍼治療を開始した。初回では効果を実感するまでには至っていない。
≪2回目~11回目≫
徐々に鍼治療を実施してから、顔面の筋肉が動かしやすくなっているような感じがするとのこと。また、3回目のときには、顔面部の血流を増加させる目的で、首肩こりに対する鍼治療も追加した。
発症から3か月が経過したころに顔面部の軽度のツッパリ感があるが鍼治療後にはスッキリはするとのことだった。
≪12~15回目≫
発症してから4か月が経過し、柳原法36点となり、順調な回復が見て取れるようになった。顔面部の軽度の突っ張り感はあるが日常生活上で気になる程度ではなく、病的共同運動も出ていない。
【施術の考察】
顔面神経麻痺に対する治療は、薬物療法やリハビリが主流です。また、顔面神経麻痺の後遺症はいったん出現すると、不可逆的に増悪して治癒することはありません。後遺症のなかでも、ワニの涙(食事中に涙が出る)、病的共同運動(口を動かすときに目も一緒に動く症状)は、会話や食事など、患者の生活の質を大きく損ねることにつながり、心理面においても大きな影響を及ぼします。
今回は標準治療に加え、鍼治療を実施たことで、表情筋部への循環改善させ、早期の回復を促し、後遺症である病的共同運動を予防することができた症例でした。
※結果には個人差があり、効果を保証するものではありません。