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​ケース2(膝の痛み:変形性膝関節症)

​1.患者様

 50歳代、女性

2.主訴

 膝の痛み(VAS69㎜)

※VASとは臨床の場で広く使用されている痛みの評価尺度です。数値が高いほど痛みの強度が強く、100㎜は「これまで経験した最も激しい痛み」、0㎜は「痛みなし」で評価されます。この数値は鍼灸院に来院された際、その時の痛みの状態を表しています。

3.発症してからの経過

 ・半年ほど前から、原因不明の膝に痛みが出現

 ・整形外科で変形性膝関節症と診断

 ・リハビリを受けるも期待する効果なし

 ・症状がひどくなる時はしゃがむ時、階段を降りる時

 ・症状が楽になるときは特になし。

とにかく動くときの痛みを何とかしてほしいというのが患者様の希望

4.初診時の状態

 ①膝関節の可動域:正常

 ②膝の動作時痛

 しゃがむ時に痛み

 ③神経学的所見

 特記事項なし

 

 ④筋緊張と圧痛

 外側広筋、大腿直筋、右膝外側裂隙

 ⑤徒手検査

 膝蓋骨圧迫テスト(-)、マクマレーテスト(-)、エリー徴候(+)

5.患者様の状態(病態把握)

・半月板由来の痛みではなく、大腿脛骨関節由来の痛み

大腿直筋の強い緊張、柔軟性の低下を確認

大腿四頭筋の緊張を和らげ、膝周囲の循環を良くすることで症状の改善が期待できると考えた。

6.治療方針

​ 膝関節周囲の循環改善と大腿四頭筋の筋緊張緩和させる目的で、週1回のペースで大腿四頭筋への施術を行った。初診は手技療法(いわゆるマッサージ)を実施し、2診目以降は、鍼治療を実施した。外側広筋・内側広筋に低周波鍼通電療法(いわゆる電気針)、外側裂隙部、大腿直筋部に置鍼10分を行った。

 鍼通電療法の後、膝関節の隙間を広げたり、運動時の骨の衝突を軽減する目的で、膝に関節モビリゼーションを行った。評価方法は膝の痛みに対してVASを治療前に実施して評価した。

7.経過

 初診時のVASが69㎜に対し、2診目が64㎜、3診目が20㎜、4診目では痛みが消失したので、膝への治療を終了した。「膝の痛みがなくなったので、しゃがむのも素早く動けるようになった」とのコメントも頂いた。

グラフ

8.考察

 今回の鍼治療による鎮痛メカニズムは、鍼の刺入によるポリモーダル受容器の興奮、軸索反射による血流改善が大腿四頭筋の筋緊張の緩和や痛みの軽減につながったと思われる。また、膝に関節モビリゼーションを併用したことで、膝関節内のさらなる循環改善にもつながったと思われる。

9.施術者からの感想

​ 今回の症例は変形性膝関節症の外側OA型であり、2診目以降の鍼治療を実施してからの痛みの軽減には驚きました。

 

また、関節モビリゼーションを実施した後の変化は顕著で、その場でしゃがみこんでも痛みが消失していたため、施術後の反応も非常に良かったといえました。

 

 半年近く続いた痛みが4回の施術で消失したことに患者様も大変喜んでおりました。関節モビリゼーションと鍼治療の併用により、理想的な効果を示した症例であったので、紹介させていただきました。

また、当院で行って鍼治療については以下のリンクで動画として紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

「膝痛に対する鍼通電について」

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